音楽界のアインシュタイン ー レス・ポール
タイトルがタイトルだけに、相対性理論だのキンピラゴボウだのが出てきそうですが、ちと違う。 でも、少し難しげな、科学っぽい話から始まります。 アカペラのように、人間の声だけで、っていうのもありますが、たいていの音楽には、楽器がつきもの。20世紀初頭ポピュラー音楽の世界で、大きな影響力を持った楽器は、10年代にブームになった、室内楽で使用される、バイオリンやマンドリンでありました。 1920年代には、ハワイアン音楽の大ブームがあり、ここでは、ウクレレが世界的大ヒット。30年代~40年代のジャズブームでは、ピアノと各種管楽器が大活躍で、弦楽器は音のでかいバンジョーが主流、といった具合。今日、最もポピュラーな楽器であるギターの出番、というのは、極めて限られていました。 20世紀前半のギター音楽というのは、ガット弦が主流で、音量がなく、ヨーロッパ音楽の世界(フラメンコ、ジプシー音楽などの民俗音楽)とラテン音楽の世界(中南米民俗音楽)での使用が主流でした。その後、スティール弦仕様のギターがマーティンによって広まり、北米で、レコード産業を中心に発展したポピュラー音楽において使用されるようになっていきます。しかし、音量がないため、ソロをとるということはあまりありませんでした。 「あー、つまんねえ・・・オレも、かっけえソロ弾きてえなあー・・」、「弾いても弾いても自分の音すら聞こえないじゃん・・」なんて、ギタリストのボヤきが天の神様だの会社の社長だのに届いたのか、変化の兆しが現れたのは、1930年代のことです。 もともとラップ・スティール(ハワイアンでお馴染みの、横置きのスライドギター)用に開発した、磁気コイル式ピックアップを、普通のギター(抱えて弾くギター。スパニッシュ・スタイルという)に搭載し、音量を電気増幅することによって、他の楽器と比較すると、極めて音量に乏しいギターの問題点を克服してからはじめて、ギターの出番が増えてきたのです。 しかし、ピックアップの搭載は、1920年代にギブソンが開発したアーチド・トップ・ギターへの搭載であったため、中が中空になっているギターの音響学的特性から、フィードバック(ハウリング)を起こしやすく、あまり音量をあげられません。また、トップ板の振動でピックアップ自体が上下運動を起こすため、ラップ・スティールのようにサステインのある、クリーンな音を出すこ